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はじめの一歩

今年5月に川崎市の保育課から、Aちゃんの入園の依頼の電話が直接ありました。
3歳のAちゃんは脳性マヒという障害をもって生まれてきました。Aちゃんは口からの食べ物の摂取が困難なためにチューブを介して流動食を投与する経管栄養を必要とするお子さんです。
両親は仕事をしているため認可保育園の入園内定はでるものの、入園前の健康診断で健康管理委員会にかかると入園許可がおりないというのです。
そのために認可外である「ぶどうの実久地園なら何とかしてくれるのではないか」という市としても困った挙句での相談でした。しかし、現状で看護師も専門的ケアができる人を確保できるまともな助成金制度のない状況ではどうすることもできません。

そんなある日、Aちゃんのママから電話をいただきました。
Aちゃんの様子や保育園に入れない経緯、どのように生活しているのかなどを、とぎれとぎれにとつとつとお話ししてくれました。話を聞くことしかできない私に、ママは最後に「大丈夫です。断られるのは、慣れていますから・・・」とおっしゃいました。その言葉は私のこころに深く突き刺さり、私はなんと言っていいのか言葉に詰まりました。
それは、何度も断られ続けて行き場がなく追い詰められ、諦めとあきらめきれない心情を感じたからです。
「私に何ができるのだろう。ぶどうの実は何ができるのだろう」そんな問いかけが頭の中をぐるぐると駆け巡るだけでした。
こうして返答もできないままに数か月が経ちました。
この間、高津区の保健福祉センターや療育センター、児童相談所のケースワーカー、知り合いの保育園の園長先生など知恵や情報をいただける方には、すべて相談にのっていただきました。
しかし、結論は、保育園への入園は難しいということだけでした。隣接する東京都や横浜市では経管栄養のお子さんでも保育園に入園できるのに、なぜ川崎市ではそれができないのか。私の中では悶々とした納得できないままの時が流れていくだけでした。

そんなある日、再度ママから電話をいただきました。
一度ぶどうの実に行ってみたいという内容でした。
何も進展がないままAちゃんを預かってあげることもできないのに、わざわざ来ていただいていいのかと、私は悩みました。しかし、このままの気持ちでいるよりも、Aちゃんとママに会ってちゃんと向き合って話をしようと思い、会うことにしたのです。
面接当日は、両親揃って来園されました。
Aちゃんは目のぱっちりした色白のかわいい女の子です。
「知らない場所にきて現実逃避ですね」とママにからかわれたAちゃんは抱っこされたままウトウト眠っていました。時々パパが鼻水やのどの奥にある痰を吸引しながら、両親からAちゃんの日常生活の様子をうかがいました。
両親は自分では身動きもままならないAちゃんの微細な表情やしぐさから、要求や感情を的確に読み取り細やかにケアしているのです。
ごく自然な感情から、私はAちゃんを抱っこさせてもらいました。
10㎏弱の重さでしょうか。Aちゃんのからだの重さとぬくもりを感じた時に、両親の愛情の深さが伝わり、Aちゃんの存在が“わたしごと”として私の手の中にありました。
おもわず私は「Aちゃんといっしょにぶどうの実においで」とママに提案しました。
いまは保育園児として預かってあげることはできないけれども、保育園がどんなところか実感して欲しいと思ったのです。
正直に言えば、その先の見通しがあったわけではありません。でも希望を捨てたわけでもありません。Aちゃんと両親とともに、まず一歩を踏み出そうと思ったのです。

障害を持つAちゃんの生きることの意味、存在の尊厳、障害を持つ親が保育園に子どもを預けて、当たり前に働くことができない現状。
今年のGWに訪問したデンマークでは、「けっしてボールを真ん中に落とさない」福祉を行っているといわれたことが強く印象に残っています。
まさにAちゃんはどこにも受け止めてもらえずに、真ん中に落とされています。両親とぶどうの実が踏み出した小さな一歩を、多くの人の力で大きく前進させ、川崎の制度を変革したいと強く願っています。

                                                 ぶどママ先生より
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プロフィール

ぶどパパ&ぶどママ

Author:ぶどパパ&ぶどママ
平成13年にぶどうの木を設立してから、私夫婦が保護者向けの園だよりに毎月掲載してきたものを、ブログで公開しているものです。
内容は、私たちが関わってきた児童養護施設や保育園、学習塾や様々な子育て応援を通して、子ども子育てを中心にその実践を踏まえた思いや願いなどを綴ってきたものです。
私たちの子ども子育ての実践を「ぶどうスタイル子育て」として確立して行きたいと同時に、広く紹介して少しでも子育てに悩んでいる親へのヒントや支えにしていただければと思っています。

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